生きものには必ず寿命があります。地球上に生命が誕生して以来37億年もの間、この生と死のサイクルは繰り返されてきました。ハードウエアとしての生物にはこのように寿命がありますが、生命のソフトウェアである遺伝情報は親から子、子から孫へと途切れることなく連綿と受け継がれてきました。このことは私達を含めた全ての生物が共通の遺伝原理に基づいて「命」を紡いでいることを表しています。この膨大な遺伝情報はDNAの暗号として染色体に刻まれているのですが、進化の過程でこの情報にわずかな変異が起こります。このため我々を含めて生物はそれぞれに多様なのです。
植物遺伝学分野は、そんな遺伝原理の普遍性と生物の多様性を、植物を材料に科学する学問分野です。主としてコムギとイネの栽培種や野生種を材料として遺伝学的研究を展開し、農学・生命科学の発展に寄与することを目指しています。
植物遺伝学分野では、成果がコムギやイネの品種改良に役立てられることを念頭に置きつつ、農業上重要な形質や環境適応に関わる遺伝子群やゲノムのダイナミクス、さらに栽培植物の進化機構について遺伝学の立場から研究を行っています。また、未来の農業に必要となる遺伝資源の探索や収集にも参加しています。