先端研究の紹介

害虫の天敵・寄生蜂の謎にせまる

環境保全型農業の味方、寄生蜂の謎にせまる

昆虫機能学研究室 教授 前藤 薫



寄生蜂って?

ハスモンヨトウの幼虫に産卵するギンケハラボソコマユバチ 昆虫の体に卵を産みこんで寄生するハチの仲間を寄生蜂と呼びます。寄生蜂は、害虫の天敵として、農薬をなるべく使わない環境保全型の害虫防除技術(生物的防除)に利用されています。昆虫機能学研究室では、マイマイガやハスモンヨトウなどの害虫に寄生するギンケハラボソコマユバチという寄生蜂(写真1)を飼育して、その行動や遺伝学的性質を研究しています。


動く獲物にアタック!

 たいていの寄生蜂は、寄生する昆虫(ホスト)やそれが食べる植物の匂いをたよりにホストを探して産卵します。しかし、ギンケハラボソコマユバチのホストは動いている幼虫なので、匂い情報だけでは上手く産卵できません。そこで、動くダミー(偽物のホスト)を用いて寄生蜂の産卵行動を解析したところ、ホストの動きを視覚によって認識して産卵行動を行なうことが明らかになりました(動画1)。こうしたタイプの寄生蜂に対しては、夜間でも弱い光を照射してやるなど、生息環境の光条件を制御することによって産卵活動を高めてやることが出来るかもしれません。




動画1:動くダミーに対して産卵行動をおこなう母蜂(山本正樹 撮影)

メスだけで大丈夫?

両性系統(左)と単性系統(右)では産下直後の卵核の染色体像は異なる また、この寄生蜂では、オスとメスがいる普通の集団(両性系統)のなかに、メスだけで単為生殖する単性系統が混じっていることが最近の研究で分かりました(写真2)。オスを産まない単性系統の増殖率は両性系統の2倍にもなるので、害虫の天敵として利用するには好都合です。単性系統の寄生蜂は両性系統からどのようにして進化するのか、また大きな増殖率をもつ単性系統が生じても、それに負けずに両性系統が生き残っていられるのは何故なのか、寄生蜂を害虫の天敵として役立てるために、これから解明したい大きな謎です。

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