電気インピーダンスで牛肉の品質を評価する

これは何?

図 黒毛和牛牛肉の画像解析 霜降りの牛肉が入った円形の容器,その内側の壁には16個の等間隔に貼られた金属テープ,そして,その端は容器の外へと延びています。これは何でしょうか?
 扉の写真は「電気インピーダンスで牛肉の品質を評価する」という仮想実験の風景です。しかし,使用している容器と牛肉は本物です。容器に貼られた16個の金属テープは電極です。その内の一対の電極から微少電流を容器内の材料に流し,ほかの電極で電位を測ります。電流を流す電極の位置を変えて同じ測定を繰り返すと膨大な数の測定データが得られます。そのデータからコンピュータを使い「逆解析」という手法によって容器に入れた材料内部の電気特性の分布をイメージとして可視化することができます。これは,電気インピーダンス・トモグラフィ(EIT)と呼ばれる電気とコンピュータの力を借りて,材料内部を可視化する手法です。このように計測では,測定のための媒体とコンピュータが欠かせません。媒体としては,電気や電波,光,それも近赤外線やX線などの見えない光もあります。一方,コンピュータは現在のあらゆる技術に欠かせない重要な道具ですが,使いこなすためにはプログラミングが必要です。バイオシステム工学のカリキュラムでは,講義や演習実験を通じて,計測法を学ぶと共にプログラミング技術を修得することを目標にしています。

EITによるミンチ肉中の異物(寒天ゲル)検出例

対象としての生物

 さて,対象とした牛肉は,勿論,生体の一部だったものです。石油や金属などの工業用材料を扱う工学部の工学と異なり,バイオシステム工学では,稲,野菜のような植物や乳牛,肉牛などの動物から,米や小麦粉,食肉など,生物由来のものを対象として,様々な「計測と制御」を扱います。稲を機械で刈り取る場合,稲の力学的な性質ばかりでなく,稲の生物としての性質も知る必要があります。果実を貯蔵して熟成させるには,果実の代謝や生理活性といった生物としての性質を理解しなければなりません。バイオシステム工学では,このような対象とする生物や生物由来の材料についても講義や実験を通して十分な知識を身につけることも目標としています。

食料の計測や制御は何のため?

 安全性や味の良さばかりでなく,消費者に必要な量の食料を合理的なコストで提供すること,これが農業や食品産業に課せられた使命です。これを達成するためには機械化や自動化が欠かせません。農業生産や機械,食品製造・加工,食品流通では何らかの機械が利用されています。食料の安定な生産や供給において,機械や装置は不可欠な要素です。 バイオシステム工学では,食の生産と供給を支える技術を,計測や制御の機能を持った機械を通じて達成しようと教員と学生が一団となって励んでいます。

生産環境工学コース 農産食品プロセス工学教育研究分野
豊田 淨彦

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