水資源のシミュレーションで世界の食料問題に挑む

農学部で水資源を研究する訳は?

 作物にとって水は欠かせませんので,水がなければ農業はできません。世界的には,まだ雨水だけに頼った農業をしている地域が多いのですが,河川や湖沼から水を取水し,長大な水路で農地に水を導いて,作物に水を供給する「かんがい農業」が食料の安定な供給を支え,増大し続ける世界の人口を養ってきました。我が国でも,使用される全ての水のうち,7割弱は農業用水として利用され,生活用水や工業用水は残りの3割強に過ぎません。他のアジア諸国では,もっと多くの水を農業用水に使っています。このように,水利用において農業用水の占める割合は目立って大きいので,農学部における水資源の研究は,とても重要な役割を持っています。今後,地球温暖化が進行すれば,気温が上がり,雨の降り方も変わると予想されていることから,水資源問題は,ますます重要になってきます。

水文学と水資源のシミュレーション

 水資源の問題に取り組む際には,水文学の知識を応用しています。水文学(すいもんがく)とは,地球上の水の循環を中心概念とする学問分野であり,雨や雪からなる降水,水の蒸発や植物からの蒸散,地表や地下を流れて河川に至る水の動きなどの現象を説明する学問です。生産環境工学コースでは3年生の「応用水文学」で学習します。この水文学では,雨水が河川へ流出する過程(降雨流出過程)を表現した数学的なモデル(流出モデル)を用いて,雨量を河川流量に変換する方法が確立されており,これを流出解析といいます。流出解析の手法によれば,計算機シミュレーションによって洪水や渇水を予測し,水資源の開発や管理を行うことや,地球温暖化が進行した将来,食料生産に不可欠な水資源にどのような影響が現れるかをシミュレーションによって予想する,といったことが可能になります。

水資源の研究で世界の食料問題に挑む

 水環境学教育研究分野では,洪水・渇水予測システムの開発や自動水質分析システムによる河川水質の把握などの取り組みによって,水量,水質の両面から,河川流域の水資源に関わる諸問題の解決を図っています。対象とする場所は,国内だけでなく,アジアやアフリカの河川や湖沼も含んでいます。特にアフリカでは,多くの国々がナイル川の水資源に頼って農業を営んでいることから,ナイル川の水資源を有効に利用するため,エチオピアやスーダンでの雨量を調べて,青ナイル川の水量を推定するシミュレーションや衛星画像データを応用したスーダンでの効率的なかんがい農業の研究に取り組んでおり,このような水資源の研究で世界の食料問題の解決に貢献することを目指しています。

青ナイル川(スーダン)

スーダンの農場で現地調査

青ナイル川上流の雨量分布解析

スーダンの共同研究者とともに

生産環境工学コース 水環境学教育研究分野
田中丸 治哉

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