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応用植物学 園芸生理生化学

野村 啓一 教授 

 果物や野菜はとれたての新鮮なものが一番ですが、実際には、収穫後様々な流通過程を経て私たちの口に入ります。この間にいかにして鮮度を保持するかが重要となります。また、果物の中には、バナナに代表されるように、追熟を必要とするものが多くあります。これらはやや未熟な時に収穫し、流通中に追熟させるのですが、やはりそれに適した収穫時期や輸送・貯蔵法があります。このように美味しい果物や野菜を食卓に運ぶためには、適切な貯蔵・保蔵条件とともに収穫適期を解明せねばなりません。これには収穫前後にわたる生育期から収穫・貯蔵期を通じた生理を理解する必要があります。
園芸生理生化学分野では、文字通り「農場から食卓まで」の園芸作物の生理について、生化学的および分子生物学的手法によって解析し、栽培管理、輸送・保蔵技術の開発につながることを念頭に、研究に取り組んでいます。

「亜熱帯果樹の温帯域での生理」に関する研究では、主にピタヤ(ドラゴンフルーツ)の冬季の代謝生理の解明を行っています。これまで亜熱帯域(石垣島)と温帯域(神戸)での周日性を比較した結果、冬季にはやはり光合成能が低下しますが、その原因としては、日長など温度以外の要因の寄与があることを明らかにしています。ピタヤの光合成様式はCAM型で、その鍵となる2つの酵素、phosphoenolpyruvate carboxylase (PEPC)とNADP-malic enzymeのクローニングも行いました。特にPEPCについては、2つのアイソザイムが存在する可能性を見出し、現在両者の酵素的特性および発現様式の差異について調べています。

  • 「ピタヤの茎に含まれる粘性多糖の有効利用」に関する研究では、特に単糖への分解経路の解析を中心に進めています。ピタヤの茎には糸引き性の粘性多糖が多く含まれており、ペクチン質以外にもアラビノガラクタンが含まれていることを明らかにしています。
  • 環境にやさしく、費用対効果の高い園芸作物の流通・貯蔵法の開発とその機構の解明に関する研究を行っています。エタノール蒸気処理を利用することにより、常温下でブロッコリーの品質を保持できること、その機構として、エタノール処理はエチレンの生合成及び反応性を阻害すること、アスコルビン酸グルタチオンサイクルを中心とした抗酸化能を保持すること、クロロプラストの形態を保持しクロロフィルの分解を抑制すること、さらに老化に関連する遺伝子群の発現を抑制することが明らかとなっています。これらの知見に加え、現在は矮性トマト「マイクロトム」を用い、エタノールによる追熟制御機構について分子レベルでの研究を進めています。
  • 1-Methylcyclopropene (1-MCP) は強力なエチレン作用阻害剤として最近注目されており、果実や野菜、切り花の貯蔵に応用するための研究が盛んに行われています。私たちは、グローバルな果物としてバナナを、日本で食されているものとしてスダチ、コマツナ、ウメなどをもちいて、1-MCPによる品質保持効果を検討しています。また、1-MCPは効果を得るのに12-24時間暴露処理をする必要がありますが、この処理にかかる時間や設備は実用化における課題となっています。私たちは1-MCPを水溶液で処理することにより、処理時間の大幅な短縮を含めた作業性を向上させうることを明らかにしました。現在は適用品目の拡大を図っています。
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