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応用植物学 熱帯有用植物学

東 哲司 教授 
深山 浩 准教授 


深水処理により草丈が2m以上に
伸長したバングラデシュの浮稲。

 熱帯地域では乾燥地帯から湿潤熱帯までいろいろな環境下に多様な植物が生育しています。それらの植物が種々な環境にいかに適応しているかを生理、生態学的に調べ、熱帯農業の生産安定と環境保護に貢献することを目的としています。現在、砂漠地帯に自生しているAtriplex属の塩生植物の耐塩性、洪水地帯で栽培されている浮稲の深水適応などを研究対象とし、植物の環境応答機構の解明を目指しています。また、アフリカのイネ科作物の強害寄生雑草であるStriga属植物、熱帯の雑草イネやタイヌビエなどの水田雑草、マングローブ、サゴヤシ等環境保全型植物の生態解明と制御の研究を開始しました。

もう少し専門的に知りたい方へ

Atriplex(ハマアカザ属)の植物種は世界の乾燥地や海岸砂地に広く分布し、飼料作物として用いられているものもある。そのなかには海水と同じ塩濃度の水耕液で生育できるほど耐塩性が強い種が存在する。これらの植物の耐塩性能力に着目し、耐塩性関連の有用遺伝子のクローニングを目的として研究を行っており、満足できる結果が得られた。
東南アジア大河川下流域の洪水地帯で、浮稲と呼ばれる特殊なインド型イネが栽培されている。浮稲は洪水による水位上昇につれて節間が伸長し、水没することなく生育を続け、草丈は最大5~6mにまで達する。この深水という環境シグナルが節間の伸長を導くメカニズムを明らかにするために、植物ホルモンによる成長制御と細胞壁の構造変化を中心に研究を進めている。

 浮稲節間の急速な伸長には水中の組織内で蓄積するエチレンが重要な役割を担っているが、エチレンが作用するには深水条件のような高湿度環境が必要であることを明らかにし、さらにはエチレンが関与しない低酸素が誘導する反応経路が存在することを明らかにした。現在、この反応経路の詳細を調査中である。また急激な節間の伸長には、細胞壁の伸展を誘導するエクスパンシンという壁タンパク質が関与しているが、エクスパンシンの活性よりもエクスパンシンに対する壁の反応性によって伸長が調節されていることを明らかにした。現在、壁構造とエクスパンシンに対する反応性との関係を調査している。

 アフリカの人たちに日本から今どのような貢献ができるのだろうか?農業場面でできることが何かないかと考えてみよう。日本には稲作についての研究蓄積が多くある。アフリカで第2の緑の革命といえば、NERICA米の普及ではないだろうか。JICA(国際協力機構)ではアフリカの土地に適した新しいアフリカ向けのイネ品種の普及に力を入れている。ネリカが栽培されるのはかんがい水が行き届いた水田ではなく、畑に陸稲として栽培される。こうしたときに、アフリカの畑には栄養条件の悪い環境でソルガムやミレットのイネ科作物に寄生するStriga属の雑草が膨大な被害を出している。これらの雑草の生態を明らかにし、制御ができたら日本の貢献が目に見えるのではなかろうか。
また、熱帯の海岸地帯はエビの過密な養殖などで、とても荒れている。平地はいたるところ油ヤシのプランテーションに囲われてしまっている。もともと自生していたマングローブやサゴヤシなどを活用して、湿地のままで持続的な土地利用の道を探っていきたい。どれでも成功すれば夢のような話である。

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