応用植物学コース 植物遺伝資源開発学

野生ナシの多様性(右の大果はニホンナシ栽培品種)

 私たちの「植物遺伝資源開発学教育研究分野」は附属食資源教育研究センターにあります。附属食資源教育研究センター(加西市)は六甲の農学部キャンパスから約60km離れた近郊農村地帯にあり、総敷地面積約40ヘクタールを有する総合農場です。教育研究の基盤として農家規模の農畜産物生産活動を行っているのが特徴です。私たちは、作物のうちでも特に、ナシ、イネ、サクラソウ、ダイコンについて、実際の生産規模までを視野に入れ、DNAのレベルから作物の起原や進化、あるいは遺伝子の機能や発現などを解析し、人類の将来に役立つ品種の育成に向けた教育と研究を進めています。

もう少し専門的に知りたい方へ

 片山は、日本に自生しており絶滅が危惧される野生ナシの保全と育種利用を目的として野生ナシジーンバンクを展開している。栽培品種には無い多くの有用形質を持つ保存系統を用い、「香り梨」の香気成分分析と関連遺伝子の単離、香気成分の害虫誘因効果、新規機能性成分の探索、花序形成の分子機構の解明、DNAマーカーによる梨の起源解明などの基礎研究を進めている。一方応用面においては野生ナシの香り、酸味、甘みなどの評価、加工・利用法の開発、粗放栽培特性の評価、すでに消失したと考えられている在来品種の掘り起こし、導入育種による新品種の育成などフィールドワーク中心の研究を行い、基礎と応用の両面から果樹遺伝資源研究に取り組んでいる。

 山崎は、イネを使った遺伝育種学の基礎研究に取り組んでいる。開花期や草丈などについて、多種多様な農業形質を示す品種や系統が世界中で知られているが、その遺伝様式や作用については不明な点が多い。F2などの交雑系統群ならびに品種や系統を使って、形態形質やDNA変異を詳細に分析し、連鎖分析やQTL(量的形質遺伝子座)解析、連鎖不平衡解析やアソシエーション解析を行って、多様な形質・農業形質を支配する遺伝子を探索している。また集団遺伝学を利用した新しい遺伝子同定法を開発中である。

 吉田は、春先にピンク色の可愛らしい花を咲かせる絶滅危惧種サクラソウの「多様性と適応に関する研究」を行っている。遺伝的多様性とは適応進化の基盤であり、長期的な存続には不可欠である。その中でも特に生存に関係するとされている「適応に関連する遺伝的多様性」に着目し、現存する野生集団が持つそれぞれ固有の遺伝組成を適切に保全することを目指している。一方で、ダイコンを用いた研究も行っている。現在、青首ダイコンと呼ばれる総太りタイプが市場の9割を占めているが、各地の様々な気候や文化に応じて、様々な形の品種が作出されてきた。その多様性に富んだ「ダイコンの根形を生みだす遺伝的なメカニズムの解明」に取り組んでいる。

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