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「病と戦いながら自然科学研究科入学から11年目の快挙、落合憲光氏(68歳)」

 落合憲光氏(68歳)がこのたび論文博士を取得されます。

博士論文題目:Characteristics and Mode of Action of the Tetranychus-specific Miticides, Bifenazate: A Basis for Developing Species- specific Pesticide
(ナミハダニ属特異的殺ダニ剤ビフェナゼートの特性と殺虫機構:特異的殺虫剤の開発のための基礎)

 落合氏が日本ユニロイヤルケミカル社(現在のケムチュラ社)の社長をしていた頃に、ビフェナゼートとよばれる新しい骨格を持った化合物が本社で開発され、その作用機作を明らかにしようとする過程でこの化合物が害虫のナミハダニなど数種のダニに極めて特異的な作用を示すことが明らかになり、化学防除と生物防除の両立するユニークな材であり、その作用機作が新規である可能性が示唆されました。

 ビフェナゼートの作用機作を明らかにすることが、特定害虫をターゲットとしたスクリーニングによる新規殺虫剤の開発につながることを確信した落合氏は、1999年に神戸大学大学院自然科学研究科博士課程に57歳で入学され、指導教員である竹田真木生教授のもとで、ビフェナゼートのダニに対する作用機作の基礎勉強をはじめられました。落合氏は、2005年64歳で日本ユニロイヤルケミカル社を退職されるまで、社長の仕事を兼ねながら、大学を休学・復学しながら東京から通い続けられました。その後、神戸に移住し、2006年4月から単身で大学近くの学生専用アパートを借りて自炊しながら、大学研究室へ通いました。その頃、ナミハダニGABA受容体のアミノ酸配列から、完全長のcDNAの分子クローニングをはじめられました。実験は予想外に難航したそうです。実験途中の2007年4月初めから6月末までは、舌がん治療のために東京の病院に入院・手術・通院をされました。3カ月の空白ができしかも発声に支障が生じたものの、殺ダニ剤ビフェナゼートの作用機作への興味を断ち切ることができず、竹田先生をはじめ研究室仲間の支援を得て、7月から奥様同伴で借家アパート住まいをし、学生生活にもどられました。2008年に紆余曲折を経てナミハダニの新規GABA受容体(TuGABAR) の獲得に成功し、ビフェナゼートとGABAとの同時処理によってGABA単独処理区の応答よりも数倍もの強い応答が得られ、ビフェナゼートはTuGABARに対するエンハンサー(synergist)として作用することが判明しました。

 この結果、殺ダニ剤ビフェナゼートの作用点が明らかとなり、従来の殺ダニ剤になかった新たな作用機構をもったカテゴリーを追加することとなり、殺ダニ剤の抵抗性回避の基礎資料としての一助になりました。また、TuGABARを発現するアフリカツメガエル卵母細胞をアッセイ系として活用して、新規化合物のスクリーニングへ応用することが可能となりました。この成果をまとめた博士論文により、3月22日の学位判定会議にてめでたく博士号を授与されることが決定され、3月31日に学位記を授与されることとなりました。


                                             (農学研究科)

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