農学は、我々の生命の源となる「食料」に関する学問です。十分な量の食料・安全な食品を供給し、人類の生命維持と健康に寄与することを目標とした応用科学です。その対象は、農場から食卓まで(From Farm to Table)の極めて広範囲に及びます。
歴史を紐解くと、我々の祖先は安定した農業生産の基盤を作るために格闘してきたことに気づきます。日本最古のため池の狭山池、弘法大師が改修した満濃池、武田信玄の信玄堤など、有名なため池、堤は全国各地にありますが、これらは、農業用水の安定的確保、新田開発などに大きな役割を果たしてきました。近代において農学の成果が人類を救った例としては、「緑の革命」が有名です。コムギの半矮性品種を育成し、世界各国における大幅な増産を可能にした農学者、ノーマン・ボーローグ博士は、1970年にノーベル平和賞を受賞しました。
農学の応用場面は農業にとどまりません。体外受精技術は、農学系の研究者が開発したもので、これが医療に利用されるようになりました。
応用科学でありながら、その基礎研究が大発見につながった例も数多くあります。植物の癌、根頭癌腫病の発病メカニズムの解明が、植物形質転換技術の開発、植物バイオテクノロジーの発展につながりました。植物バイオテクノロジーは日進月歩で、最近では、ノーベル化学賞(2020年)の授賞対象となった「ゲノム編集技術」を用いて、様々な作物の改良が試みられています。
農学は、エキサイティングなテーマの宝庫です。皆さんのご活躍を期待しています。
2021年4月1日