応用機能生物学コース 植物栄養学

 植物・作物が生育している自然環境は、必ずしも彼らにとって最適な環境とは限りません。むしろ、農業に代表されるように土壌改良、施肥、潅水、温度制御などの栽培管理をしなければ健やかな生育、多くの生産性は望めないのが現実です。つまり、彼らの潜在的な生長能あるいは生産性の100%発揮はあり得ないのです。栽培管理のまずさ、土壌改良のまずさは、植物・作物の生育の基盤となる光合成能を抑制してしまいます。このような状況は非常に危険であることを私たちは明らかにしてきました。光合成では、光のエネルギーを用いて二酸化炭素を糖に変換しています。そして、この糖は、私たち人間と同様に彼らが生きていくために必要な呼吸の原材料となるのです。光のエネルギーは、植物・作物のご機嫌に関係なく日々太陽から降り注がれてきます。したがって、光合成能が抑制される環境では、光エネルギーが余ってしまい、いとも容易く植物の光合成能が失われていくことを明らかにしてきました。余った光エネルギーは、光合成で光エネルギーを化学エネルギーに変換する場、光合成をおこなっている葉緑体チラコイド膜、で活性酸素 (Reactive Oxygen Species, ROS) を生成します。そして、同時に、私たちは、光合成能が失われないメカニズム(活性酸素生成抑制メカニズム)の発見にも至り、このメカニズムを「P700 酸化システム (P700 Oxidation System)」と名づけました。現在、植物・作物の生産性を低下させる活性酸素(ROS)の生成制御および消去の全容を解明すべく、研究を続けております。そこでは、生長に影響を与える環境ファクター(N, P, Kなどの植物栄養素;高温あるいは低温などの温度因子;強光あるいは弱光などの光環境など)と「P700酸化システム」の関係解明が重要な答えを導くものと考えております。

●植物栄養学研究室のキーワード
P700 酸化システム、活性酸素(Reactive Oxygen Species)、光合成、光呼吸、環境ストレス、地球温暖化、チッソ、葉緑体

●植物栄養学研究室
○教授:三宅親弘

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