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食料環境経済学コース 食料経済・政策学

草苅 仁 教授 


食料経済学のひとこま

 なぜ日本などの先進国は飽食の状態にありながら、多くの発展途上国は食料不足から脱することができないのか。なぜ途上国では環境破壊や砂漠化につながる資源収奪的な農業が続けられているのか。先進国の食料過剰と途上国の食料不足を改善するにはどうすればよいのか。なぜ飽食の日本で食料自給率が下がり続けているのか。日本の食料政策はどうあるべきなのか。こうした問題に答えるため、経済発展と農業・環境問題、途上国の貧困問題と農業開発、食料・環境政策のあり方などについて教育・研究を行っています。

もう少し専門的になりたい方へ

 

 地球上で生産された食料を平等に分配すれば食料不足問題は存在しないが、所得および食料の分配が不均等であるため、先進国における飽食と発展途上国における飢餓が併存している。多くの途上国は人口転換理論の第III期にあり、過去半世紀ほどの間に人口が爆発的に増加した。人口圧力と経済成長が水不足、砂漠化、森林資源の枯渇等の問題を引き起こした。人口増加に食料生産の増加が追いつかず、発展途上国には8人を越える慢性的栄養不足人口が存在している。途上国は今後より多くの食料を先進国から輸入することが必要になると予想される。こうした途上国における食料不足を解消するために、出生率を抑制する施策や、食料生産の飛躍的増加を可能にする「第二の緑の革命」をめざした試験研究が進められている。

 一方、多くの先進国では食料生産力の発展が食料需要の増加を上回ったために農産物過剰が発生したが、その対策として生産調整やダンピング輸出が行われてきた。先進国は飽食の時代を迎えており、食事のPFCバランスの崩れや食料の過剰摂取による肥満人口の増加が問題となり、食生活の改善が重要な政策課題となっている。先進国の中では、零細な農業経営が一般的な日本や韓国では、賃金の上昇にともない農業部門が比較劣位化して農産物輸入量が増加してきた。日本の食料自給率は40年以上にわたって一貫して低下傾向をたどり、先進国の中では一番低い39%となった。海外から大量に輸入される安価な農産物の影響を受け、農業の交易条件は不利化しており、農業生産の絶対規模は縮小傾向をたどっている。農業従事者の減少と高齢化に歯止めがかからず、農業後継者問題が深刻化している。認定農業者や集落営農組織等の規模が大きく生産性の高い経営体に農地を集積する政策が推進されているが、農地の流動化の速度が緩慢なため農業の構造改革は期待どおりに進んでいない。

さらに、最近では新興国の農産物輸入の急増や、トウモロコシ、サトウキビ等がバイオ燃料の生産に使用されているため、穀物価格が急騰している。地球温暖化は地球全体で見ると農業生産に負の影響を及ぼすことが予測されているが、各国の利害が対立して、数値目標の設定など、世界全体をカバーする有効な枠組み作りは難航している。

  食料経済学分野では、このような食料、農業、環境、地域社会に関係する社会経済的問題について教育・研究を行っています。現在継続中の研究は以下のとおりです。

1)土地賦存条件に恵まれない日本、韓国で食料自給率が低下した原因を比較研究するとともに食料安全保障政策のあり方について研究している。また、1980年代中頃以降黒龍江省の稲作で進行した緑の革命を分権化、市場化という視点から分析して発展のメカニズムを解明するとともに、最近の米産業の発展について研究している。

2)経済成長にともなって食料需要を変化させる要因として、実質所得の増加による食料消費の高級化に加え、時間の価値が高まることによって生じる摂取形態の変化に着目し、それが日本の食料需要に及ぼす影響を解明した。経済発展は未発達な市場から成熟した市場へ転換するプロセスであるが、市場経済の浸透によって、モノに続いてサービスの市場化が起こり、日本の家計でも家事の外注化が進んで食生活の様相が変化している。家事の外注化は家計内公共財である家族機能の弱体化をもたらしたと言われているが、市場化の進展と公共財や環境財の供給との関係を研究している。

3)過疎・高齢化、そして地域格差の問題に対して、農村社会経済の内発的な発展のための方策、地域コミュニティ再生に関する研究を行っている。また、都市と農村の交流や新しい連携にあり方についても実践的な研究を進めている。その他、急速に減少する農業・農村の担い手の問題に関して、地域リーダーの特性や育成に関する研究、地域ナレッジの継承、新規就農やUIJターンの促進についても研究を進めている。さらに、広域営農組合による多角経営等新しいビジネスモデルの現状と課題についても研究を進めている。

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