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応用動物学コース 感染症制御学

河野 潤一 教授 
佐伯 圭一 准教授 
松尾 栄子 助教 

PCR法による薬剤耐性遺伝子の検出(左) 蛍光標識した大腸菌
(中央)
イバラキウイルスの電子顕微鏡像(右)

 生物の進化は捕食,寄生,共生などいろいろな生物相互間の密接な関係をなしには語れません。ヒトはこの百年あまりの間にテクノロジーによる進化を遂げ病原微生物による感染症から逃れる手段すなわち免疫と化学療法を見つけました。しかし,微生物側も負けてはいません。これまで知られていなかった新しい感染症の発生や細菌における高度薬剤耐性の出現などの対抗手段で応じ,21 世紀が到来した今日もなお人知との競争が続いています。この研究分野においては,動物やヒトの感染症の原因となる病原体に関する未解決の問題について,今どうなのか,なぜそうなったのか,これからどうしたらいいのかを分子生物学のレベルで探求しています。
主な研究内容:

1) 黄色ブドウ球菌 (Staphylococcus aureus) は人や動物に化膿性疾患の原因となるばかりではなく,産生する毒素各種によってもさまざまな疾患を引き起こします。エンテロトキシンによる乳製品の汚染では食中毒を起こした人が1万5千人以上と社会的に大きな被害をもたらしました(2000年) 。本研究分野では,①黄色ブドウ球菌の動物や食品における分布状況を遺伝子型別や各種の毒素産生性の面から累積調査を行っているとともに,新しい検査法についても検討を行っています。②MRSAと呼ばれるメチシリン耐性黄色ブドウ球菌は高度多剤耐性菌として医療における脅威となっています。基本となる耐性遺伝子mecAは,人や動物に存在するその他の種のブドウ球菌にも広く分布していることがわかってきました。しかしながら,不明な点はまだまだ多く残され,耐性遺伝子の起源や伝達機構に関する研究を行っています。

2) 大腸菌は,動物の消化管に常在する腸内細菌の一種で,ほとんどの菌株は無害ですが,まれに疾病の原因となることがあります。また,消化管では無害であっても,血中や尿路系に侵入した場合は病原体となります。近年では,牛腸管由来と考えられるO157株やO111株といった菌株が,致死的な食中毒の原因として注目されています。特に,2011年に発生したO111株による集団食中毒事件により、2012年7月牛肝臓の生食が禁止されています。現在,牛腸管内で増殖した大腸菌が,体外だけでなく,体内で他の臓器(肝臓)を汚染してしまう可能性が考えられています。本研究分野では,大腸菌がどのように腸管から他の臓器(肝臓)に移行するのかを,蛍光標識した無害な大腸菌をマウスに接種することでモニタリングしています。

3)神経変性疾患の一つであるプリオン病(伝達性海綿状脳症)は,牛海綿状脳症(BSE)やヒトのクロイツフェルト・ヤコブ病などがあります。プリオン病においては,全ての哺乳類が元々持っている「細胞型」プリオンタンパク質が変化し,「異常型」プリオンタンパク質が検出され,異常型プリオンタンパク質に本疾患の伝達能力があるのが最大の特徴です。本研究分野では,哺乳類が本来持っている「細胞型」プリオンタンパク質が健常な生体内において一体どのように代謝経路に関係しているのかを研究しています。

4)イバラキ病は1959年日本で初めて報告された嚥下障害を主徴とする牛の感染症(致死率〜20%)で,家畜伝染病予防法の届出伝染病です。その原因であるイバラキウイルスは茨城県下の発病牛から最初に分離され,レオウイルス科オルビウイルス属,流行性出血病ウイルス群に属する事が明らかとなりました。現在、日本ではワクチン接種によりイバラキ病の発生は抑えられています。しかし,ほぼ毎年,感染モニタリング用の「おとり牛」でのイバラキウイルスに対する抗体の陽転が確認され,また2013年には鹿児島県下の牛がイバラキ病を発症しており,今後もアウトブレイクが起こる可能性は否定できません。本研究分野では,イバラキウイルスが,どのように牛に感染・増殖し,病気を起こすのかを,様々な手法を用いて研究しています。

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